退職代行を使うのはクズでも甘えでもない背景と理由

退職代行

退職代行を使って会社を辞めた人のことを、「クズ」「甘え」と非難する人がいるのは否めません。一方で退職代行というサービス自体は今や市民権を得ており、実際に利用する人は多いです。

日本労働調査組合が行ったアンケート調査※によれば、20~39歳の19.8%が「退職代行を利用する」とのこと。「利用を検討している」(24.9%)も含めれば、おおよそ2人に1人は、「退職代行を使う可能性がある」ことになります。

※参照元:「退職代行サービスに関するアンケート」(2021年5月19日発表)

これぐらい多くの人が退職代行を使おうとしているのには、それなりの背景や理由があると考えるのが自然でしょう。この記事では、退職代行の利用がクズでも甘えでもない背景・理由を解説します。

退職代行を使うのが”クズ””甘え”だと言われる理由

はじめに、なぜ退職代行を使うのが「クズ」「甘え」と言われてしまうのか、その理由を考えてみましょう。その方が、「それでも退職代行を使わなければならない背景・理由」を納得しやすいからです。

残された人に迷惑がかかる

一般的に退職代行を使って辞める場合、引き継ぎは一切行えないか十分に行えません。そのため退職代行を使って急に辞めれば、残された同僚の負担が増えてしまうわけです。残された方の同僚からすれば、「引き継ぎもせず辞めやがって…」と思うかもしれません。

会社を辞めるなら自分で伝えるべき

通常、会社を辞めるときは上司に相談し退職日を決定します。退職日は上司に報告してから早くて1~2ヵ月後程度にするのが一般的で、退職日までに引き継ぎを完了させるわけです。

転職エージェントのワークポートが行った調査※によると、転職者の70.5%は「退職の意志を会社に言いにくい」と感じているとのこと。多くの人はその言いにくさを感じながら、それでも会社になるべく迷惑をかけないよう段階をへて退職をしているわけです。

※参照元:「転職希望者から受けた退職に関する相談について」(2018年12月20日)

そういった手順を経ずに仕事を残したまま会社を突然辞めれば、苦々しく感じる人が出てくるのは仕方ないでしょう。

【まとめ】退職代行の利用を責められるのはごもっともではある

ここまで見てきた2つの理由は、いずれもごもっともではあります。これらの視点だけで見れば、確かに退職代行の利用は甘えに感じたり使う人を「クズ」と呼びたくなったりするかもしれません。

けれど退職代行を使う人の多くは、自分達が非難されるこれら理由を十分に把握しています。その上で他に方法がないと考えるから、退職代行を使うわけです。

それでも退職代行が求められる背景

退職代行を使う側も責められる理由があることをみてきました。それでは、それでも退職代行が必要となるのは、どんな背景があるのでしょうか? 1つずつみていきましょう。

仕事が原因で自殺してしまうほど苦しむ人が多い

職場に大きな不満なく働いている人は、「自分は運がいい」と考えた方がいいかもしれません。世の中には、仕事が原因で自殺するほど苦しむ人が少なくないからです。

警察庁が発表した「令和2年中における自殺の状況」によれば、自殺をする原因・動機は以下のようになっています。(パーセンテージはデータを基に当サイトが計算しました。)

【自殺をする原因・動機】

原因・動機 人数(人) 割合(%)
家庭問題 3,128 15.0%
健康問題 10,195 48.8%
経済・生活問題 3,216 15.4%
勤務問題 1,918 9.2%
男女問題 799 3.8%
学校問題 405 1.9%
その他 1,221 5.8%

1年間で約2,000人もの人が、仕事の問題(勤務問題)で自殺をしてしまっているのです。自殺者でこのぐらい存在するわけですから、自殺するには至らないまでも苦しんでいる人は、これよりもはるかに多いと考えるべきでしょう。

以下、参考までに同じ統計から、勤務問題の詳細をより細かく分類したデータを紹介します。

【自殺原因・動機/勤務問題の内訳】

原因・動機 人数(人) 割合(%)
仕事の失敗 312 16.3%
職場の人間関係 522 27.2%
職場環境の悪化 273 14.2%
仕事疲れ 510 26.6%
その他 301 15.7%

失敗や人間関係・職場環境・仕事疲れなど、いろいろな原因で自殺してしまう人が多いことが分かりますね。実際、パワハラを受けていたり、休む時間がないほどの長時間労働を強いられたりして自殺してしまったというニュースはよく見かけます。

いずれにしろ無理して会社に残るより、退職代行を使ってでも会社を辞めた方がよいでしょう。

「慰留ハラスメント」が横行している

「慰留ハラスメント」という言葉をご存じでしょうか? パワハラ・セクハラをはじめ、いろいろな「○〇ハラスメント」がありますが、慰留ハラスメントもその1つ。会社を辞めたいという意志を示した社員に対して、強引に辞めさせない上にパワハラを加えることです。

職場のハラスメントは、パワハラやセクハラだけではない。いま、「慰留ハラスメント」が猛烈な勢いで広がりつつある。会社を辞めたいと言った途端、会社側からパワハラまがいの圧力を受けるケースだ。当人の意思など無視同然。会社の都合だけを押し付けて、辞めさせない。

参照元:日刊ゲンダイDIGTAL「退職代行の専門家が明かす『慰留ハラスメント』壮絶実態

慰留ハラスメントという言葉を聞いて、自分に当てはまるという方も多いのではないでしょうか。上記記事では、具体的なパワハラの内容として以下のような例を挙げています。

  • 「職場放棄も同然」「残った社員に迷惑をかける。ひどい。」などと精神的なプレッシャーをかける
  • 「辞めるなら有給はとるな」「残業代は払わない」「退職金を払わない」と脅す
  • 退職したいと伝えるや否や頭を叩かれたり、ペットボトルを投げつけられたりした

辞めると言ったあとに、こんな仕打ちを受けたら辛くなるのは当然です。こういった職場であれば、自分の力だけで粘り強く辞めたいと交渉しても、認めてくれるとは限りません。仮に何とか退職できたとしても、心がぼろぼろになるまで追いつめられる人も少なくないでしょう。

先ほど紹介した「転職希望者から受けた退職に関する相談について」の調査結果でも、慰留ハラスメントを裏付けるデータがあります。退職時に会社からの引き留めにあった人は62.4%で、そのうち17.7%はトラブルにまで発展したとのことです。具体的には、以下のようなトラブルが報告されています。

  • 「家にまで来られて引き留められた」(30代・女性・福祉介護)
  • 「退職時の有休消化を断られた」(30代・男性・営業)
  • 「“辞めさせない”の一点張りで胸ぐらをつかまれた」(20代・男性・営業)
  • 「退職日を勝手に延ばされた」(20代・女性・事務)・・・など

しつこい引き留めが時代遅れになりつつある

マイナビが行った「転職動向調査 2021年版(2020年実績)」によれば、退職代行を使う理由は以下のようになっています。

<退職代行を利用しようと思う(利用した)理由/複数回答可>

  • 上司に退職意向を伝えるのが億劫:50.7%
  • 会社に引き留められるのが面倒:41.8%
  • 会社・上司に伝えるのが怖い: 39.5%
  • 会社に申し訳なくて言い出せない: 31.8%
  • 法律に定められる権利を履行したい:25.2%
  • 退職届を出したが受理してくれない:11.6%

ストレートに「引き留めが面倒」(41.8%)を感じている人が全体の4割もいます。さらに「上司に退職意向を伝えるのが億劫」という人も50.7%と2人に1人の割合です。億劫と感じるのは、「伝えることで引き留められたり嫌味を言われたり」すると考えるからと想定されます。

以前までは会社に年功序列が当たり前で、1つの会社に定年まで働き続ける終身雇用が一般的でした。けれど今では非正規雇用もふえ、終身雇用や年功序列は崩壊しつつあります。

終身雇用が当たり前だった古い世代は、若い社員が簡単に会社を辞めるのが信じられないのでしょう。おまけに少子高齢化で労働者が不足する昨今は、会社とすれば大事な戦力をそう簡単に手放したくはありません。これらの理由でしつこい引き留めが行われるわけです。

しかし昨今では成果主義・実力主義で評価される会社も少なくありません。経済産業省でも、日本の企業がこれから競争力を維持するためには、「ジョブ型人事制度の拡大が必要」※と述べています。

※参照元:「DXレポート2(令和2年12月28日)

ジョブ型人事制度とは、簡単に言えば業務内容を中心にした人事制度です。その業務に適した人材であれば、年齢の若い社員や外部のフリーランスでも高く評価して活用します。

年功序列・終身雇用でなく、実力主義やジョブ型人事制度が採用される社会では、「1つの会社で働き続ける」ことに大きな意味はありません。それより自分の実力がより高く評価される会社に転職したり、フリーランスとして自分の力を活かしたりした方がメリットは大きいのです。

それが分かっている若い世代は、1つの会社にとどまることにこだわりません。むしろ転職したりフリーランスとして独立したりして、より自分の実力が活かせる環境で働きたいと考えるわけです。少子高齢化で労働者が不足しているのも、この世代からしたら会社の都合と考えます。その会社の都合で、転職したいという自分の希望を犠牲にしようとまでは考えません。

こうした人達が、会社の引き留めや上司に辞めたいと伝えることを面倒と感じるのも無理はないでしょう。しつこい引き留めは、こうした若い世代の気持ちを萎えさせるだけで逆効果なのです。

退職代行が使われる理由

退職代行が使われる昨今の背景をみてきました。簡単に振り返ると

  • 仕事が原因で自殺してしまうほど苦しむ人が多い
  • 「慰留ハラスメント」が横行している
  • しつこい引き留めが時代遅れになりつつある

という状況がありました。こういった背景をふまえて、退職代行が使われる理由をみていきましょう。

会社が退職を認めてくれないから

今すぐ辞めたいほど会社で苦しんでいるのに、退職したいといっても認めてくれないというのはよくあるケースです。特にブラック企業では、このようなことが起こりやすい傾向にあります。
日本労働組合では全国20~49歳の会社員516名を対象に、2021年6月に「ブラック企業に関するアンケート」を行いました。このアンケートによると、「勤めている会社がブラック企業だと考える」人は全体の31.2%にも上ります。この結果をみても、世の中にどれだけブラック企業が多いかが分かりますね。
こういった場合、自分の力だけでは会社に退職を認めさせるのは困難です。そこで退職代行が使われることになります。

当サイトでは退職代行利用者の方から数多くの体験談を伺っていますが(体験談の記事一覧リンク)、以下のように同様の話を聞くことは多いです。

勤め先がブラック企業で辞めたいと伝えると「今辞められると困る。もし辞めるなら損害を賠償してもらう。」と脅されるような状態でした。そこで仕方なく退職代行を使うことに。結果、無事退職できました! 損害賠償をされることもなかったです。

【30代男性】

パワハラを受けている上に、退職したいと伝えても認めてもらえませんでした。それで退職代行を依頼したところ、無事退職を認めてくれたので助かったです。退職時に必要な書類関係の手配なども丁寧にフォローいただけました。

【30代男性】

とても退職を言い出せる雰囲気ではないから

職場の雰囲気が悪く常にピリピリしていて、退職したいと言い出せる状態でないことも少なくありません。そうした中で、死にたくなるほど仕事にストレスを溜めてしまう人も多いです。

会社を辞めたいときにまず相談するのは一般的に直属の上司ですが、その上司からパワハラを受けていることもあります。そんな状況では、上司に辞めたいと言いにくいでしょう。

また慰留ハラスメントが横行するような会社では、自分も同じ目に合うのが怖くて退職したいと言い出せなくなるのは簡単に想像できます。そうした人たちが退職代行に助けを求めることも少なくありません。

職場の環境は勤め先によって全く異なります。自分の職場環境をイメージして「なぜ退職代行を使う必要があるか分からない」という人は、職場に恵まれているのでしょう。とても退職を言い出せる雰囲気ではない職場も存在するのです。

会社の引き留めが面倒で「時間の無駄」と感じられるから

これは前の2つと大きく異なる理由ですね。従来のような年功序列・終身雇用の文化が消えつつある昨今、1つの職場に勤め続けることにこだわらない若い世代の社員は多いです。

これら社員は、「自分の実力を今より活かせる会社に転職したい」と考えます。勤続年数より実力が評価される成果主義やジョブ型人事を採用する企業も増えており、若い世代の希望とも合致するのです。

また、こうした若い世代は会社からの引き留めを「時間の無駄」と考えます。終身雇用の文化が身に沁みついているような古い世代の上司から引き留められても、心が動くことはありません。しつこく引き留められることを、むしろ面倒に感じます。

そこで、これら若い世代の社員は、多少費用がかかってもスムーズに退職できる退職代行を選ぶわけです。彼等の思考は、確かに古い世代には理解しづらいかもしれません。

まとめ

若い世代の2人に1人は退職代行を使おうと考えてるか、使うかもしれないと考えている状態です。退職代行を使うことをクズとか甘えと決めつけるより、なぜ退職代行の需要が高いか考えるべきでしょう。

仕事で精神がぼろぼろになるまで疲れているのに、会社を辞めさせてもらえないというケースも少なくありません。退職したいと申し出た人を苦しめる、慰留ハラスメントも横行しています。こういった人たちが、頼りにするのが退職代行です。退職代行を使えば、ノウハウのある業者が代わりに会社と話して退職に導いてもらえます。

その一方で、そもそも引き留められること自体を時間の無駄と捉える若い世代も少なくありません。企業で成果主義やジョブ型人事が採用されやすくなっている昨今では、1つの職場に長く務めることにこだわりがなくなっているのです。

実際自分のキャリアを重視して転職したり、フリーランスとして独立したりする若い世代も増えています。こうした世代を強引に引き留めても、時間の無駄と思われるだけです。それでも無理に引き留めようとすれば、退職代行を使われることになります。

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