退職を切り出すのは、多くの人にとって簡単ではありません。その上、職場の環境などによっては、さらに退職を切り出しにくくなるものです。この記事では、どんな理由で退職を切り出しにくくなるか振り返った上で、どうすれば切り出しやすくなるかポイントを5つ紹介します。「会社を辞めたいのに退職したいと言えない」「精神的にはぎりぎりなのに、退職を切り出せずにいる」という方は是非参考にしてください。
なぜ退職を切り出せないのか
人によって、退職を切り出せない理由は違うでしょう。1つだけでなく2つ以上の理由で退職を切り出せないという人もいます。その理由によって、退職を切り出せないときに役立つポイントも同じではありません。そこでまずは、実際にどんな理由で退職を切り出せないのか主なものをみてみましょう。
本当に辞めてよいのか迷っているから
そもそも会社を辞めるというのは多くの人にとって、簡単に決断できる内容ではありません。曲がりなりにも、今の会社で築いてきたポジションや実績があります。また辞めたところで、今よりよい職場に転職できるか保証されているわけではありません。
「本当に今の会社を辞めても大丈夫なのか」というのは、ほとんどの人が退職の際に抱える悩みなのです。
周りの人に悪いと思うから
自分が辞めることで、同僚に負担がかかるかもしれません。自分のことを期待してくれていた上司をがっかりされることもあるでしょう。家族と一緒に暮らしている場合は、家族に迷惑をかけてしまう可能性もあります。こんな風に周りに悪いという気持ちがあれば、退職を切り出せなくなるのも無理はありません。
引き留められるのが面倒だと感じるから
会社が人手不足だったり、あなたが会社にとってなくてはならない人材だったりすれば引き留められるかもしれません。その結果、上司などと長い時間かけて交渉を重ねても、「結局退職を認めてくれない」なんてこともありえます。そういった時間を「無駄」「面倒」と感じる人もいることでしょう。
とても退職を言い出せる雰囲気ではないから
忙しさなどが理由で職場の雰囲気が悪く、会社を辞めたいと言い出せる雰囲気でないという人も少なくありません。その上で、上司がいつもぴりぴりしているようなら、余程の勇気がないと退職したい、と切り出すのは簡単ではないでしょう。
上司などの怒りを買う(パワハラを受ける)のが怖いから
上司に「退職したい」と伝えれば、怒りを買うのが目に見えている – というケースも多いです。会社を辞めたいと上司に伝えたあとに「慰留ハラスメントを受けた」というケースも少なくありません。
職場のハラスメントは、パワハラやセクハラだけではない。いま、「慰留ハラスメント」が猛烈な勢いで広がりつつある。会社を辞めたいと言った途端、会社側からパワハラまがいの圧力を受けるケースだ。
参照元:日刊ゲンダイDIGTAL「退職代行の専門家が明かす『慰留ハラスメント』壮絶実態」
辞めさせてもらえない上に、かえって会社からパワハラを受けることになるなど状況が悪化する – なんてことが想像できれば、とても退職を切り出す勇気は湧かないですね。
退職を切り出すためのポイント
上でみてきたように、「退職を切り出せない」理由は1つや2つではありません。人によってどんな理由があるかも違うでしょう。
そのため、「どうすれば退職を切り出せるようになるか」のポイントも人によって別々です。ここでは、退職を切り出しやすくなるためのポイントを紹介するので、ご自身にあうものを参考にしてみてください。
本当に今の会社を辞めて良いか自分自身に問い直してみる
「会社を辞めても良いか」は、最終的には自分自身で判断するしかありません。自分にとって会社を辞めることにメリットはあるか、きちんと転職できるかじっくり自分自身に問い直してみましょう。その上で「どうしても会社を辞めたい」「今の会社にいても精神的にきつい」ということなら、この後のポイントを参考にしてみてください。
自分が辞めても、できるだけ周囲に迷惑がかからないように準備する
自分が辞めることで同僚に負荷がかかるのを避けたい、ということであれば、できるだけ迷惑をかけないよう準備しましょう。
- 自分が請け負っている仕事はなるべくすませておく
- 仕事の引き継ぎをする
- 自分が受け持っている仕事をリストアップして、マニュアルなどを用意しておく
といったことがあげられます。
家族がいる場合は、家族にそれとなく「もし退職したらどうする?どう思う?」と告げて相談するのも手です。
周囲に相談してみる
いろいろな事情で退職を切り出せないときは、自分のことをよく知る人に相談してみるのもよいでしょう。案外、自分では気づいていなかったことをアドバイスしてくれるかもしれません。少なくとも、人に話を聞いてもらうだけでも気が楽になります。
周りに相談できる人がいないときは?
周りに相談できそうな人がいないときは、以下の窓口・サイトを使うのも検討してみてください。
■こころの耳電話相談(無料)
厚生労働省が運営している労働者のための無料相談窓口です。産業カウンセラーなどの相談員が、幅広く労働の悩みについて相談にのってくれます。無料ですので、少しでも相談したい内容があれば、まずは利用してみてはいかがでしょうか。電話の他、SNSやメールでも相談を受け付けています。
■ココナラ(有料)
スキルマーケット「ココナラ」では、有料ですが悩み相談のサービスも提供しています。カウンセラーや弁護士などが悩みを聞いてアドバイスをくれるので、興味があればサイトをのぞいてみてはいかがでしょうか。
退職届を郵送で届けてしまうのも1つの手
上司が高圧的などの理由で、どうしても自分で言い出すのが難しいときは、退職届を郵送で届けてしまう方法もあります。法律的にみれば、正社員であれば2週間前に退職したいと伝えれば自由に退職が可能だからです。退職届には、退職日として2週間後以降を指定します。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
参照元:e-gov法令検索
退職届が相手に届きさえすれば、会社はそれを拒むことができません。退職届を会社に提出しさえすれば、堂々と会社を辞められるのです。退職届を郵送する際の方法や注意事項については、以下記事を参考にしてください。
ただし、この方法では会社を一方的に辞めることになるので、怒った上司から連絡が来ることもあります。もちろん、退職したわけですから無視すればよいのですが、それが難しいときは次の項で紹介する方法を検討ください。
「退職代行」なら業者が代わりに退職に必要な調整をしてくれる
自分でどうしても退職したいと切り出せないときは、最終手段として退職代行の利用も視野に入れましょう。退職代行とは、業者が依頼者の代理として会社に連絡し、退職できるように調整してくれるサービスです。
たいていの業者なら必要書類の手配や有給取得の手配もしてくれます。また依頼日当日に会社へ連絡し、退職の調整をしてくれる「即日退職」に対応した業者も多いです。
退職代行は今や市民権を得たサービスで、利用する人も少なくありません。日本労働組合が行ったアンケート調査(※)によれば、20~30代の44.7%が「退職代行を利用する」か「使う可能性がある」と答えています。この世代の約半分は、退職代行を利用する可能性があるわけです。(当サイトのアンケートでは、40代以上の利用者も少なくありません。)
※参照元:「退職代行サービスに関するアンケート」(2021年5月19日発表)
退職代行のメリットは、業者がきちんと会社の同意を得てくれる点ですね。退職届を郵送する方法は簡単ですが、一方的に辞めるのでその後に会社から連絡が入る可能性もあります。有給の取得も難しいでしょう。
その点、退職代行なら会社が同意しているので、会社から連絡が入る可能性は低くなります。実績ある人気の業者へ依頼すれば、有給もきちんと取得できる場合が多いです。
自分で退職を切り出すための一般的な方法
仮に自分で退職を切り出す場合に、できるだけスムーズに話をすすめられるように一般的な方法をみておきましょう。
■STEP1:直属の上司に時間をもらう
直属の上司に「お話したいことがあるので時間をいただけませんか?」と伝えます。この時点では退職したいことは話しません。あとのステップで伝えた方が、話がスムーズにすすみやすいからです。上司の了承を得たら、2人でゆっくり話せる会議室などを確保しておきましょう。
■STEP2:上司に退職の意志を伝える
会議室などで、上司に退職したい旨を伝えます。ここまで用意して話をするので、相手もある程度話の内容を予測している可能性が高いです。「突然で申し訳ありませんが、退職させて下さい。」とはっきり伝えるようにします。
これら手順のあとに退職に必要な手続きを人事部などとすることになりますが、退職を切り出す手順はこれだけです。
以下、退職を切り出すときに覚えておきたいポイントを紹介します。
- 1~3ヵ月前には退職したい旨を伝えるようにしましょう。それより短くなると、引き継ぎが難しくなるので、いい顔はされません。
- 会社への不満を退職理由にするのは避けましょう。揉める原因にもなります。「他にやりたいことができた」「家族と過ごす時間を増やしたい」など前向きな理由にするとよいです。
- 「●月■日に退職したい」とはっきり伝えるようにしましょう。決意が固いことを示せば、相手も引き留めづらくなります。
退職代行を使って辞める流れ
次に退職代行を使って会社を辞める際の一般的な流れをみてみましょう。業者によって細かい違いはありますが、だいたい同じです。退職代行の流れが分かっていれば、依頼するハードルも低くなりますね。
■STEP1:無料相談
退職代行では基本的に、最初に無料相談を行ってサービスの内容に納得してから依頼するのが一般的です。この段階で料金が発生することはありません。業者側から簡単な説明やヒアリングがあるので、分からないことがあれば聞いておきましょう。
■STEP2:申込み&支払い
サービス内容に納得したら、申込と支払いを行います。退職代行サービスは基本的に先払いです。
■STEP3:簡単なヒアリング
料金の支払い後、退職代行を実行するための簡単なヒアリングが行われます。ヒアリングと言っても、希望の退職日や有休有無など聞かれる内容は簡単なので手間はかかりません。
■STEP4:退職代行の実行
ヒアリング後、いよいよ業者が会社へ電話で連絡し退職代行が実行されます。依頼者は結果を待つだけです。
■STEP5:結果報告
退職代行の結果報告があります。実績がある業者であれば、成功率はほぼ100%。安心して結果報告を待ちましょう。
まとめ
自分の中で「本当に退職して大丈夫か」迷いがあったり、上司が威圧的で怒りを買うのが怖かったり、退職を言い出せない理由は様々です。その理由によって、どうすれば退職を切り出せるようになるかも異なります。どうしても自分で退職したいと言い出せないときは、退職届を郵送したり退職代行を使ったりするのも手です。実際、退職代行で辞める人は多く市民権を得た方法の1つになりつつあります。