会社を辞めたいときには、本来であれば1~2ヵ月前にそのことを上司や同僚に告げるのが理想です。そのぐらい前に伝えられれば、余裕を持って引き継ぎを完了できますし、円満に退職することもできます。
けれど「上司が高圧的」「職場の人間関係や雰囲気がよくない」などの理由で、退職を退職日ギリギリまで言いたくないという人もいるでしょう。この記事では、上司や同僚に退職日をギリギリまでいわない方法や注意したいポイントをまとめて解説します。
退職をぎりぎりまで言いたくない理由
退職したいことは、なるべく早めに上司や同僚と共有できた方がよいのは言うまでもありません。けれど上司や同僚と良好な人間関係が気付けていないときは、以下のような事情から、退職をぎりぎりまで言いたくないこともあるでしょう。
●退職を無理矢理引き留められそう
常に忙しい職場などでは、無理に引き留められ会社を辞めにくくなることがあります。
●冷たい対応をされる
会社を辞める社員に対して、上司や同僚が心無い言葉をかけたり嫌がらせをしたりする例も少なくありません。
●退職を伝えたあとに気まずくなる
忙しい職場などでは、1人が退職すると同僚の負担が大きくなる可能性があることから、気まずい雰囲気になることもあります。
こういった理由で、どうしても前もって上司や同僚に退職する旨を伝えられないときは、ぎりぎりで伝えるための適切な方法を考えましょう。
そもそも、ぎりぎりまで退職することを告げないことは可能か?
一般的には、会社を退職するときは少なくとも1~2ヵ月前に上司に報告するべきとされています。会社の就業規則で、「退職するときは〇ヵ月前に上長へ伝えること」と決められていることもあるでしょう。
しかし、法律的にみると、正社員なら2週間前に退職したいと伝えれば自由に退職が可能なのはご存知でしたか? 民法では、以下のように定められています。
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
参照元:e-gov法令検索
就業規則に何が書いてあっても、法律の方が優先されます。そのため正社員の方は、2週間前に申し出さえすればいつでも退職できるのです。
さらに言うと、2週間後を退職日に指定した上で、その日まで出勤してなくはならないわけではありません。有給が残っていれば、退職日までに消化可能です。有給に関しても労働基準法により、社員は任意に使用してよいとその権利を保護されています。※
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
参照元:e-gov 法令検索
※補足 会社にも時季変更権といって、社員に有給を取得する時期を変更して欲しいと「依頼する」権利は認められています。しかし退職が迫っているときのように、他に変更しようがないときには、会社はこの権利を行使できません。 |
つまり退職日を2週間後に設定しそれまでは有給を消化することにし、今日から出社しない、ということもできるわけです。このルールに従えば、言葉通り「退職をぎりぎりまで言わない」ことも可能ということになります。
ちなみに消化する有給が残っていなければ、退職日まで欠勤扱いにしてもらうことも可能です。
要するに法律的にみれば、会社を今すぐ辞めることも可能ということだね。
ぎりぎりまで言わずに退職する方法3選
法律的にみれば、退職日ぎりぎりまで退職したいと言わないでも大丈夫なことは分かりました。とはいっても、このルールに基づいて上司や同僚に面と向かって「今日で辞めます」と言えないと言う人も多いでしょう。
それでは、退職をぎりぎりまで言わずに辞めるためには、どんな方法があるでしょうか? 1つずつ見ていきましょう。
退職日の2週間前に、上司だけに告げる
「上司だけなら退職したいと言える」のであれば、退職日の2週間前頃に「2週間後に辞めさせてください」という方法もあります。有給が残っているようであれば、有給消化についても相談しましょう。
その上で「他の人には言わないで欲しい」と上司に頼み、同僚には退職日まで秘密にしておいてもらいます。ただ、これができるのは、上司に理解があって信頼できる場合のみですね。そうでない場合は、次にあげる方法を試しましょう。
郵送で退職届を送り付ける
直接、上司へ言うのが難しければ、郵送で退職届を送り付ける方法もあります。郵送であっても退職届を会社へ届けさえすれば、退職の意志を会社に伝えたことになるのです。
上司や同僚と話すわけではないので、これならできるという方も多いのではないでしょうか。なお、このときは普通郵便でなく、「配達証明付き内容証明郵便」を利用するのがおすすめです。
配達証明付き内容証明郵便なら、郵便物の内容や確かに会社へ届けたことを、郵便局が証明してくれます。普通郵便だと「そんなの受け取ってない」と会社が誤魔化すこともできてしまいますが、配達証明付き内容証明郵便ならできません。
退職届を郵送で送る方法に関し、詳しくは以下の記事でも解説しています。よろしければあわせて参考にしてください。
退職代行を利用する
退職代行とは、あなたに代わり業者が会社と話して退職できるよう調整してくれるサービスです。上司が高圧的等の理由で、自分から退職したいと言い出せないときには、特に役立つサービスとなっています。
経験豊富な業者に依頼すれば、有給もきちんと取得可能です。「即日退職」と言って、「退職代行を依頼した日から、出社せずによいように」調整することも、対応する業者なら承っています。
「自分で言うのは難しい。郵送で退職届を送るのも不安」という方は、退職代行の利用がおすすめです。以下記事では、おすすめの退職代行業者を紹介しているので、あわせて参考にしてください。
退職代行は費用がかかってしまうけれど、最もスムーズに会社を辞められる方法だよ。有給もとれるよう調整してくれるから、「会社に有給をとるのを断れている」なんていう人にも適しているね。
スムーズに退職するためのポイント
退職前に必要な対応ができていれば、スムーズに退職しやすくなります。有給取得などの調整もしやすくなるので、ポイントをおさえておきましょう。
本当に信頼できる上司・同僚には退職する旨をこっそり伝えておく
「この人にはお世話になったな」とか「この人とは退職後は付き合いたい」という上司・同僚がいる、という方も多いです。もし、いるのであればそういった人にだけでも退職する旨をあらかじめ知らせておきましょう。
逆にそういった上司・同僚に対して、何も知らせず退職するのは心残りなものです。前もって伝えておけば、退職するときに何か協力してくれるかもしれません。
ただし、こっそり伝えた上司・同僚から、他の人に退職する話が漏れては意味がなくなってしまいます。本当に信頼できる上司・同僚にだけ伝えるようにしましょう。
引き継ぎに必要な情報・データをまとめておく
退職時に、一番問題となるのは仕事の引き継ぎができているか否かです。とはいえ、ぎりぎりで退職を伝えたいときに、きちんと引き継ぎを完全にすませておくのは難しいでしょう。
代わりに、引き継ぎに必要な情報・データを整理してまとめておくのも手です。たとえば、業務手順や必要資料を、一枚のペラでもよいのでメモにまとめておくだけでも何もしないより全く違います。会社側も「引き継ぎがすむまで辞めさせない」と言いづらくなるでしょう。
返却が必要なものは会社のデスク・ロッカーなどへしまっておく
ノートパソコンや制服などのように、会社から借りて家に持ち帰っているものもあるでしょう。退職後に返却するとなると、会社へ持っていくとは宅配で送るとかしなくてはなりません。それより退職日前に会社のデスクやロッカーへしまっておけば、その手間を省けます。
私物は可能な範囲でこっそり持ち帰っておく
急に退職するときに、問題となるのは会社に置いていた私物の処理です。マグカップや文房具など、私物を会社で使っている人も多いでしょう。急に退職した場合は、退職後に会社へ取りに行くか、会社から郵送してもらわないといけません。
会社へ行けば会社の人と顔をあわせることになりますし、郵送にすれば配送料がかかってしまいます。「郵送で送ってほしい」と会社の人にも頼みにくいでしょう。
そういったわずらわしさを避けるためにも、私物は可能な範囲で退職日までに持ち帰ることをおすすめします。ただしあからさまにいろいろ持ち帰ると、「なんであんなに持ち帰ってるんだろう」と不審がられる可能性もあるので注意して下さい。
まとめ
法律的にみれば、退職日ぎりぎりまで会社を辞めることを上司などへ伝えないことも可能です。正社員なら退職日の2週間前までに会社へ辞めることを申告すればよいため、2週間後に辞めると伝え、その日まで有給消化する手もあります。
また上司に直接、「会社をすぐ辞めたい」と言い出しにくいなら、退職届を郵送する方法を検討するのもよいでしょう。もしくは退職代行業者に依頼すれば、代わりに会社への調整も行ってくれます。有給消化の手配もしてくれるのも、退職代行業者を使うメリットです。