退職代行を使って退職をするときに、退職金をきちんと受け取れるかは心配な問題ですね。本来、退職するときには就業規則に定められた内容で退職金を受け取れる筈ですが、会社の意向に反して退職する際は、しっかり受け取れるか不安になるのが正直なところでしょう。
結論から言うと、退職代行を使っても退職金は満額受け取れますが、注意すべきポイントがいくつかあります。この記事では、そのポイントをまとめて解説します。
退職代行を使うことを理由に退職金の支払いは拒否できない
まず前提として、退職代行を使い会社にとってうれしくないかたちで退職したとしても、会社は退職金の支払いを拒否することはできません。もちろん就業規則で退職金の規定があることが前提ですが、横領のような重大な背任行為がない限り、減額・不支給が認められるとは考えられないからです。
(1) 退職金は、就業規則や労働協約により支給条件が明確に定められている場合、労働基準法11条の「労働の対償」としての賃金に該当します。その法的性格は、賃金後払い的性格、功労報償的性格、生活保障的性格を併せ持ち、個々の退職金の実態に即して判断することとなります。
(2) 退職金の支給基準において、一定の事由がある場合に退職金の減額や不支給を定めることは認められますが、賃金の後払い的性格及び功労報償的性格を考慮すれば、労働者のそれまでの功績を失わせるほどの重大な背信行為がある場合などに限られます。
引用元:「確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省」
退職金は給料と同じく従業員にとっては生活のために必要なお金であるとして、余程のことがない限り支払い拒否・減給が認められないのです。
退職代行を使うか否かに関わらず、あなたが余程会社にひどいことをしていない限り、退職金が支払われない、減らされるなんてことはないよ。
会社に大きな損害を与えた場合は減給・不支給の憂き目にあう可能性も?
独立行政法人 労働政策研究・研修機構によれば仮に懲戒解雇の処分を受けても、「重大な不信行為」さえなければ、退職金を支払わないなんて認められない、とのことです。
1)懲戒解雇の場合、退職金不支給措置も認められるが、その場合でも、労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。
参照元:(34)【退職金】退職金と懲戒解雇・不利益変更|雇用関係紛争判例集|労働政策研究・研修機構
ただ、逆にいえば「重大な不信行為」とみなされるような事実があれば、減給・支払拒否される可能性は否定できません。
過去の事例では、痴漢撲滅に取り組んでいた鉄道会社の職員が、他社の鉄道で痴漢をして逮捕されたとして、裁判で退職金の減給がされることになった、という事例(※)はあります。
(※)参照元:(34)【退職金】退職金と懲戒解雇・不利益変更|雇用関係紛争判例集|労働政策研究・研修機構
退職代行どうのこうのというより、会社の社会的な信頼を大きく損ねたりとか、よっぽど酷いことしてない限りは就業規則にある通りきちんともらえると思っていい。
仮に就業規則に減額の要件があったとしても関係ない。あまりにひどい不信行為がなければ減額とか支払拒否をされたりすることもできない。
手続きの仕方次第では税金を多くとられる可能性はある
退職代行を使って会社を辞める場合に気を付けなくてはいけないのは、普通に退職して退職金を受け取るより、税金を多く取られてしまう可能性がある点です。以下、その理由を見ていきますね。
本来、退職金には税金の優遇措置がある
本来、退職金については税の優遇措置があり、以下の金額が控除されます。
勤続年数が20年以下の場合 | 40万円×勤続年数
※80万円に満たない場合は80万円 |
勤続年数が20年超の場合 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※参照元:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
さらに退職金の課税額は、上記で控除した額の半分となります。
分かり辛いかもしれないので、1つ例を出してみましょう。退職金の支給額が300万円、勤続年数が5年だったとします。この場合、退職金のなかでも課税される金額は、
(300万円-40万円×5年)÷2=50万円
です。もしこの優遇措置を受けられないと、退職金300万円にたいしてまるまる税金がかってしまうことから実際に受け取れる退職金額に大きな差が生じるのは明らかですね。
一方、勤続年数が少なくて退職金が80万円未満なら、結果的に税金がかからなくなります。このぐらいの退職金でも、手続きをした方がよいでしょう。
退職代行を使うと、税金の優遇措置を受け損なう場合も…
そうして退職代行を使う場合の注意というのはここから。
退職金に対する税金の優遇措置を受けるためには、会社へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなくてはなりません。通常、会社と円満退職をすれば人事担当などからこの書類に関する説明を受け、退職金支払い前にこの書類を提出できます。
しかし退職代行で本人が会社から退職のための説明を受けていないときは、この書類の提出がスルーされてしまうことが考えられるわけです…。
それを避けるためにも、退職代行を使った場合には、自分で区役所・市役所へ行って「退職所得の受給に関する申告書」を入手し会社へ提出するようにしましょう。
優遇措置が受けられなかったら、確定申告の還付で取り戻すことは可能
万が一、申込書の提出が遅れてしまい税金の優遇措置を受けられなかった場合でも、次の確定申告できちんと手続きすれば払い過ぎた分の還付を受けることができます。かなりまとまった金額の還付になると想定されますから、必ず申告するようにしましょう。
ただ還付のタイミングは、早く確定申告をすませた方が早くなるものの、早くても退職金を受け取った翌年の2月、遅ければ4月になります。そこまで待たなくてはなりません。
いずれにしろ、退職代行を使って、この知識がないまま退職金を受け取ると、「退職所得の受給に関する申告書」の存在も確定申告のことも分からず、税金をだいぶ余分に支払ってしまうことになるから怖いですね…。
退職代行を使うと、退職金に対する税金の優遇措置を受けるための手続きがうやむやになって忘れられてしまうことがある。優遇措置を受けられないと、かなりの損になるから十分に気を付けたいね。
万が一、会社が退職金の支払いを拒否した場合は?
繰り返すように横領のように余程悪いことをしない限り、会社が退職金の支払いを拒むことはできません。しかし、それでも会社が「お前には退職金を払わん!」とか「減額する!」と言ってきたら、退職金をきちんと支払うように交渉しなくてはなりません。
ただ、あなた一人で直接会社と交渉するのは大変でしょう。以下、その負担を軽くするための方法を紹介しますね。
業者によっては退職金の交渉もしてくれる
多くの退職代行業者は、会社と退職金などの交渉をすることはできません。法律に関わるような交渉を弁護士以外が行って人から報酬を受けることを「非弁行為」と呼び、法律で禁止されているからです。
一方、労働組合が運営する退職代行業者なら、会社と退職金の交渉をしてもらうことができます。労働組合法によって、組合員の代理で組合が会社と交渉することが認められているからです。
労働組合型の退職代行業者の場合、退職が完了するまでの間だけ、指定する労働組合に加入します。退職後の脱退は当然可能で、退職代行で示された料金の中に組合費も含まれているのが一般的。余計な追加料金もかかりません。
そのため退職金に対する不安がある場合は特に、労働組合型の退職代行業者に依頼することをおすすめします。
中でも当サイトがおすすめしている労働組合型の退職代行業者が「退職代行SARABA」です。
SARABAは退職代行業者の中では最大手で実績も豊富。料金も24,000円と良心的で追加料金がかかりません。なにより万が一退職できなかった場合の全額返金保証もついていますから、安心して申し込めますね。
SARABAなら退職金などの交渉のノウハウもきちんと持っているし、利用者の評判もいい。安心しておすすめできるね
労働局などの公的機関に相談する
退職金の支払いを拒否された場合、労働局・労働基準監督署に相談するという方法があります。
いずれも厚生労働省の出先機関で、まず労働局の役割は会社と労働者の間でトラブルがあった場合に、和解のための助言や斡旋をすることです。退職金を支払ってくれないことを相談すれば、交渉のための助言をしてくれます。
一方、労働基準監督署は、労働基準法などの法律に基づいて会社を指導するのが役割です。法律に違反する内容が確認された場合は、会社に対して指導を行います。退職金の支払い拒否についても、それが法律的に違反していると判断すれば、会社に指導を行ってくれるわけです。
ただ、あなたに対して退職金が支払われていないという個別の案件に対して、労働局や労働基準監督署が直接会社と交渉してくれるわけではありません。
労働局・労働基準監督署へ相談することによって、あなたの交渉が有利になる可能性はあるものの、結果的にあなた自身での会社との交渉が必要となる可能性が高いので注意しましょう。
「こういう方法もあるんだ」と頭の片隅においておく程度の内容。自分で交渉する場合には、有利な武器の1つにはなりえるね。
弁護士に相談する
弁護士が直接運営している退職代行業者に依頼するのも1つの手です。弁護士なら、この手の交渉に長けていますし、万が一裁判になった場合にもあなたの強い味方になって法廷に立ってくれます。
というか、たいていは弁護士が理論立てて退職金を支払うべき理由を会社に丁寧に説明した上で、「支払ってくれないなら裁判に訴えますよ」と言えば、会社が確実に負ける裁判になるまでもなく、退職金を支払ってくれるとは推測されますが…。
ただ、弁護士型の場合は、基本料金の他に20~25%の成功報酬も発生するので注意して下さい。たとえば500万円の退職金を勝ち取った場合には、100~125万円の成功報酬を支払う必要があるということです。
そのため、初めから明らかに会社と裁判になりそうな場合を除いて、当サイトでは、まず労働組合型の退職代行業者に依頼することをおすすめしています。労働組合型なら成功報酬をはじめとした追加料金がかからないからです。
当サイトでは、労働組合型の中でも大手の「退職代行SARABA」をおすすめしています。SARABAならLINEでの無料相談を24時間受け付けていますよ。
【参考】そもそも退職金はどのくらいもらえるもの?
最後に参考までに退職金はどのくらいもらえるのか、その参考となるデータを紹介しますね。実際にあなたがどのくらいの退職金を受け取れるかは、就業規則を見れば分かるはずですから確認してみてください。
【自己都合による退職の場合のモデル退職金】
勤続年数 | 高校卒業者 | 高専・短大卒業者 | 大学卒業者 |
10 | 89.6万円 | 97.3万円 | 113.5万円 |
15 | 168.4万円 | 183.2万円 | 214.9万円 |
20 | 278.8万円 | 297.5万円 | 353.4万円 |
25 | 407.3万円 | 438.0万円 | 524.3万円 |
30 | 543.3万円 | 591.1万円 | 705.9万円 |
参照元:中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)|統計・調査|東京都産業労働局
ご覧のように、勤続年数によって大きな差がありますね。
まとめ
横領のような重大な不信行為がなければ、たとえ退職代行で会社を辞めたとしても、会社が退職金の支払いを拒否したり減額したりすることはできません。ただ、会社が何かと理由を付けて支払いを拒む可能性がないとは言入れないので、その際の交渉をあなたに代わって行ってくれる業者を選ぶのがおすすめ。
中でも労働組合型の退職代行業者なら、あなたの代理で会社と交渉を行ってくれます。弁護士に依頼するように成功報酬もかかりませんから、コストパフォーマンスも高いです。